■マコの傷跡■

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chapter 35



~ chapter 35 “同棲” ~ 


付き合って、と言われれば多分断っていたけれど
彼が「一緒に暮らそう」と言うのを私は受け入れた。

会社を辞めてしばらくは失業保険が出たからそれでなんとかした。
食べ物は相変わらず彼が買ってきたり、食べに連れ出してくれたりする。

一緒に暮らすようになったのに、彼と私の間でお金の話は一切しなかった。
彼に、いくら収入があるのか知らない。
借金が結構あると言うけれど、いくらあるのかは知らない。
生活費の支払いもきちんと割り振ったりしていなかった。
私のアパートで暮らしたので当然、家賃も光熱費も私の名義で請求が来る。
「一緒に住んだら真琴、金要らないじゃん」
最初にそう言われていたけれど結局お金は私が出せるだけ出していた。
足りない場合だけ「足りない」と言うと彼が払ってくれる。
それでも1人きりでなんとかしなければいけない状況よりはマシで
私は少しづつ元気を取り戻して行った。
とりあえずつなぎのつもりで、ガソリンスタンドでアルバイトをして生活した。

食事は私が家で作って2人で食べるようにした。
彼が帰る前に買い物に行くのでその場合の材料の買い物は私が払う事になる。
作らなかった日は彼が帰ってきてから買いに出かけるか食べに出かけた。
その場合の支払いは彼がしていた。
彼は外に出た時は私にお金を出させなかったが、催促しなければ生活費を入れてくれる事もなかった。
食費以外の生活費も私が払って、食事を作る場合は食費も私が持つ・・・
作らなければ彼が食費を持ってくれる事になるのだから当然だんだん作らなくなって行った。
家賃や光熱費を払ってしまうと食材を買うお金が残らなかった。

それでも私はだんだん外食ばかりなのは無駄だと思うようになった。
外食で出してくれるお金を私に預けてくれれば、それで食材を買い
私が作ればもっと安くあがるのは間違いない。

私は彼にお金の催促をするのが嫌だった。
足りない時に嫌々ながらも彼に出してもらうしかなく催促したが
もっと決まりごとを作って毎月決まった金額を黙っていても渡して欲しかった。
何度も相談を持ちかけたけれど、彼は話に応じてくれなかった。
必ずこう言って話し合いからは逃げた。
「足りない場合は言ってくれれば出すよ」

一緒に暮らしていたのに、彼は私を信用できないのだと思った。
でも、あれだけボロボロだった私と暮らし始めたのだから
まだ信用してもらえなくても仕方ないと思っていた。
ガソリンスタンドの給料では足りない。
私は運送屋に勤め、軽トラの運転手になった。




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